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【 ICANOF アーカイヴ 】
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写真とシャーマニズム/イタコと伝神絵(でんしんえ)
Itako(Shaman inHachinohe) and Epiphany Drawing(based on tiny photographs in Hanoi)


港千尋 MINATO, Chihiro(Photographer/Associate professor at Tama Art University)

聞き手 豊島重之(ICANOFキュレーター)

(1)数珠と補助霊/七福神とシャーマニズム
豊島  今日は「写真とメディア」というテーマで、港千尋さんにお話し頂きます。まず、メディアといえば報道。その対極にあるメディアが霊媒、ここではイタコさんですね。両方とも、コミュニケーションの媒体、それをメディアというわけですね。で、おととい、港さんが八戸にいらして、午前は根城の小笠原妙(みょう)さん、午後は南郷の中村タケさんをお訪ねしました。お二人のイタコさん、どんな印象でしたか。
 僕の第一印象は年齢が分からないってことですね。どういうことかと言うと、背中が丸まっていらっしゃいます。おそらく椅子ではなくて、畳にずっと座っている姿勢が多いのでそうなるんでしょうけど。ところが顔を見ると、つやつやしていて、「どんな化粧品を使ってるんですか」って女性なら尋いてみたくなるような、米ぬかでも塗りこんでいるんじゃないかっていうほど、つやつやしているんですね。ですから、お顔を拝見しても、年齢わかりませんね。しばらく話を聞いていて、まず思ったのは、ストレスのないお顔をしてらっしゃるんですよ。人間がストレスのない状態っていうのを僕ら、なかなかもう思い描けなくなってるっていうか。普段の生活の中でやっぱり忙しいこともあるし、景気が激しく動いてるとか、いろんな要因で世の中なかなか生きにくい、ストレス、多いと思うんですね。ところがお二人のイタコさん、ほんとに語る口調もホントに柔らかくて、声も年齢が分からない。目をつぶって聞いてると、もしかしたら少女かもしれないっていう、日々の生活の澱(おり)とか澱(よど)み、みたいなものを全く感じさせないお顔とお声で。
 私は写真家ですから、ついついファインダーを覗いて人間でも世界でも判断するくせがありまして。不思議なことに写真っていうのはファインダーで、四角い窓で世界を切り取る。世界を切り取った枠の中だけをみるっていう、枠の中に入らないものは全部切っちゃうわけですから、考えてみればすごくエゴイスティックなところがあるんですけども、逆にファインダーを覗いた分、よく見える。いわゆるポートレート写真家が言うには、どんな人でも、例えば大スターでも、ファインダーを通してみると、その人間がよく分かるといいます。本当にその通りで、ファインダーを覗いてみたイタコさんの顔がですね、やっぱり我々とは違う、違う心を持っている人なんだなあ。なんの先入観もなく、そう思います。そういう意味では、9月のICANOF展向けにどんな作品ができるか、まだ分からないんですけど、とりあえず会えて良かった、撮影できて良かったというのが、最初の感想です。
 小笠原さんはまだ少し目がお見えになってて、名前を書くと、紙をほとんど顔にくっつけて読んでましたけど、中村さんのほうは全盲の方で、そのせいか、お部屋も非常に簡素といいますか、掛け軸が2枚くらい、数珠(じゅず)を持ってらして、大きな鉢と。ちょうど午後の4時ぐらいでしたか、斜めの光が障子を通して入ってきて、非常に静かな雰囲気だったんです。米内さんのお話をまずお聞きになって、いくつか質問したあと、「どうぞ教えてください」とお願いごとをしていく。その時に長い数珠を指で少しずつ辿っていくと、私、真後ろから撮影していたものですから指の動きは見えなくて、後で豊島さんが教えてくれたんですけど、指先で数珠を一つ一つ触っていく。これ、洋の東西を問わず、マントラを唱える時に、それからキリスト教でも同じですね。キリスト教でもロザリオに数珠がついていて、その数珠を一つ一つ指で数えながらお祈りをあげていく。そういった文化の違いを超えた人間の何かモノを探すときの身振りっていうのが、思わずここにも現われてきて、非常に感動しましたね。
 イタコというと、一般的に非常に特殊な人たちだと考えられていると思うんですが、おそらく八戸や青森県に住んでいても実際にイタコに会った人は案外少ないんじゃないかな。現代社会では、やはりすごくマージナル(辺縁的)な存在なんですね。でも、彼女たちの祈る姿勢とかお祈りする時の身振りっていうのは、実は特殊なものではなくて、むしろ人間一般に通じる、洋の東西を問わない、普遍的な身振りなんだなあと、そんなふうに思いました。
豊島  ここに、港さんの「遠心力」っていう、去年出た本があります。この遠心力って、何かというと、副題に「冒険者たちのコスモロジー」とあります。人間って、どうしても遠くへ行きたい、遠くのそのまた遠くへ行きたい、そこは海の底であったり、地の果てであったり、宇宙の果てであったり。まさに港さん御自身、そういう遠心力をフルに発揮して、中南米やヨーロッパやアジア、世界中を旅して写真を撮りながら、もう十何冊も執筆されているわけです。そこで、たとえば韓国のシャーマンと八戸のイタコさんとの違いってことでは如何でしょう?
 実は3年くらい前からアジア七ヶ国をまわって、アジアのシャーマンを取材してるんです。シャーマンと言っても国によって呼び名がいろいろで、一番多く会っているのは、近いこともあって、韓国の「ムダン」ですね。大きな違いっていうのは幾つもありまして、韓国では女性だけじゃなく、男性のシャーマンも非常に多い。年齢もお年の方からとても若い方まで、しかも地方によって随分違う。たいてい山のほうに。もともとシャーマニズムっていうのは山と深い関係にあるものですから、韓国でも山にたくさん集まっているわけです。
 2年前に会ったシャーマンはテジョンという、ソウルから車で2時間ぐらいのところにある大きな町ですけど、そこに住んでるんですね。町に着いてバスから降りるといきなり赤い旗がたくさん立っている。お祭りでもやってるのかなと思って聞くと、その旗が立ってるところが全部シャーマンの家だっていうんです。僕はそれまで、シャーマンっていうのは人里離れたところに住んでる気味の悪い、恐いような印象を持っていたんですが、本当にもう住宅街というか、繁華街の中にもいる。そういう意味ではお医者さんというか、一番近いのはニューヨークの精神科医。ちょっと落ち込んだ時の相談役、聞き役っていう役回りだと思うんですけど、韓国の場合も全くその通りで。シャーマンの家にお邪魔して座っていると、近所の人たちがひっきりなしにやってくる。一人5分ぐらい、なんか言ってもらって、五色の旗をこんなことやってですね、有難うございますって言って帰って行く。コンサルタントっていったところでしょうか。
 大きな儀礼になると、「クッ」というんですけど、肉やら魚やら果物やらお供えをたくさんして。有名なのは下駄のように大きな包丁の刃を2本立てて、トランス状態に入ったシャーマンがその包丁の上に、ひょいと素足で、ぴょんと飛び乗る。飛び乗るだけじゃなくて、その上をぴょんぴょん跳ねながら、包丁の上で歌い踊るという、これが有名な「クッ」というものなんだけど。青森の、日本のイタコと比べると、派手で音が大きくて色も原色で、とにかくモノが多い。
 韓国のシャーマニズムっていうのはいろんな要素が入りこんでいるんです。中国からも入ってるし、おそらくシベリアからも。道教の影響も受けてるし。日本人である我々からすると、神様がずらーっと並んでいるような縁日の七福神みたいな感じですね。実際、七福神というのも、日本の神様ではなくて、インドや中国やいろんな国の神様が一艘の船に乗ってやってくる、まことに都合のいい習俗です。シャーマニズムもそういうところがあると思うんですね。例えばキリスト教やユダヤ教のような純粋性はない。いろんなところの神様を、補助霊といいますが、鹿の霊とか熊の霊とかを引き連れて困難に立ち向かう。イタコさんもそうでしたよね。全国のお稲荷さんのリストが出てくる感じで、そういう意味では似たところがある。ありとあらゆる神様と補助霊とに「どうか力をお貸し下さい、探して下さい、会わせて下さい」と願い事をするわけです。ムダンはパフォーマンスとして、より派手で、大陸的なところがあって、でも根本ではイタコと通じるものがあるという気がします。
 重要なのは「お助けください」ということだと思うんですね。他の宗教、仏教やキリスト教、イスラム教のように一つの神を信仰するものとは違って、できるだけたくさんの助けを借りて集団で困難に立ち向かう、これはシャーマニズムの特徴と言っていいんじゃないでしょうか。強大な力というんじゃなくて、成敗するとか采配をふるうとかいうんじゃなくて、すごく小さな神々だと思うんですね。全国津々浦々のお稲荷さんが皆集まって力を合わせて困難に立ち向かう、そういうグループワークあるいはネットワーク、そのへんがシャーマニズムの面白いところです。
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(図録 "ICANOF Media Art Show 2001" より転載)



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