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【 ICANOF アーカイヴ 】
- ICANOF Archive Materials -



高橋寛子インタヴュウ
 「イカノフ風味─和紙人形作家を訪ねて」


聞き手 石橋智子・三浦文恵(ICANOFプロデューサー)


(1)一枚の紙が語りかけてくる陰影が好き
石橋智子 季節ではやはり、えんぶりの冬がお好きですか?
高橋寛子 はい、正月からえんぶりまでは。その後はギシッと寒かったのが緩んで、私の緊張感もなくなって、水をかぶせられたみたいにザワザワ寒くなるの。今が一番辛い季節なんです。それに土の中の色々な活動が伝わってきて、落ち着かないんです。
石橋 変なことを伺いますが、感、強いほうですか。
高橋 強いほうです、たぶん。
石橋 見えちゃったりとか?
高橋

(笑)それはないですけど。ウン、強いです。この季節は月の光が・・、例えば春の雪が降るとその雪に月の光が反射して障子に映るの。何とも表現しがたいただならぬ様子。何かを訴えて伝えているということは、こちらもそれを感じ取らなければならないから、それで一所懸命見てしまうし・・。そんなことしていると忙しいんですよ。私、光や風をいつも感じていたい。それがなくなると、私の創作がもう終わってしまう。そればっかりで動いているようなとこ、あるんです。えんぶり人形をつくっていて、それが季節に対する挨拶になっている。
石橋 えんぶりはお好きですか。
高橋 はい、生まれながらに。でも、好きなのは4組くらい。たまたま最初に、奉納摺(ず)りと重地(しけぢ)組の「田の神の昼やすみ」という演目に感動して、「ああ、こういうことなのか」と、人形創りに入っていったんです。だって、私たち、町通りの人間には農家に対する憧れや興味があるし、「えんぶり」って聞いただけで春を感じてしまうところがあって。
三浦文恵 高橋さんの好きなえんぶりとそうでないえんぶりの、基準は何ですか?
高橋 品格の違いです。たくさん見ていると、それぞれの部落の様子や人間関係も想像できるようになったりするでしょ。その関係自体に品格があると、芸がやはり、いい形で残っていくと思うんです。でも、一斉摺(ず)りなんて、まさに「春の胎動」という感じで好きですよ。
私の中に季節時計みたいなのがあって、敏感です。昨日は、お雛様仕舞いました。本当は可愛いから、今日まで待って、皆さんにお見せしたい気持ちもあったんですけれど。だらだら飾っておくのも嫌で。
石橋 あ、雛祭りの四日後の昨日は、昔からお雛様のお引っ越しの日って、ラジオで言ってました。
高橋 それは知りませんでした。ただただ、感覚だけで・・・。
三浦 すごい! 本当の季節時計ですね。
高橋

子供のころにお節句とか、ちゃんとしてもらってましたから、自然に身について季節時計が出来上がったんだと思います。正月の年縄(としな)につける四垂(しで)を切るのも私の役目だったし。今では習慣になってしまって、ちゃんとやらないと逆につまらない。
(神棚の人形を指して)あれが初代の人形です。よく「色は使わないんですか」って尋かれますけど、一枚の紙が重なりあって立体になって、語りかけてくる陰影のほうが私はずっとおもしろい。
三浦 人形をつくる紙はどんな紙なんですか?
高橋 鳥取の因州(いんしゅう)和紙です。わりと張りがあって、我(が)が強くて、揉(も)みこむのは大変なんですけどね。日だまり色っていうのかな、それで好き。この色だと古くなっても自然に焼けていくんだけれど、漂白されたものはただ薄黒くなるだけなの。自然光が入ったところで人形を見ると、ひときわきれいですよ。この因州和紙にたどり着くまでの紙遍歴はたいへんでした。

(2)人形って、ヒトガタだし、分身ですから
石橋 人形をつくっていらっしゃる時は、無の境地という感じですか。
高橋


いえいえ。此処をこうしよう・・というような技術的なことだとか、あの組の長老の方、今年もお元気で会えるかな・・とか。そういうことを考えるのは1月くらい。だから、1月が好き。大寒の頃は自然と友だちにも会わず、外に出ないで熱中してるの。仕事部屋がまるで座敷牢みたいになるんです。自分でもどうして、こんなに真剣につくってるのかなと思うくらい。御飯のときだけ台所に行って、また戻って(笑)。
家がこんなふうだから、光の動きを感じたり外の音を聞いたり。時にはえんぶりの唄のテープを流しながら。えんぶり一色の中でつくってます。ひたすらつくっている。そういう気分はいい、引き締まってて。作業の中では、芯(しん)を巻くのが一番大変なんです。堅くキッチリ巻かなければならないから、けっこう力が要って、胸が痛くなるほど疲れるんです。糸の長さは200メートルですよ。でも、誰も力仕事だとは思ってくれない。紙だから手先の仕事だと思っていらっしゃるでしょ。
石橋 手、きれいですね。
高橋 いやいや、春先はこの通りで。ほら、節がこんなに太くなっちゃって。大工さんの手みたいだなと思ってます。本当は細かったんです。紙は微妙なので、荒れた手ではできないんです。それに私、汚い手でつくるのは絶対いやだもの。これ以上よくならないとしても、ケアして最善を尽くした手でやりたいという気があるんです。紙って神聖なの!
三浦 気持ちが入ってるんですね。
高橋 とくに人形は・・。季節が締まってくると表情も締まってきて、いい男になってくる。そんな人形が六体くらいあると、人形からパワーをもらって私自身も楽しく頑張れるんですが。この時期には、人形はよそに行っちゃうでしょ。なんか気が抜けてしまって。
石橋 「気」も一緒に持ち去られるのかしら。
高橋 そうそう、ある。分身だもの。以前、油絵も買って頂いたりもしたんですけれど、人形はそれ以上に家族が嫁いだみたいなんです。買って下さった方と親しく会話したり交流ができて、絵にはない醍醐味があると感じています。
石橋 どうしても相性ってありますでしょう? この方にはちょっと安心してお預けできないな、なんてことはありますか。
高橋 ええ。だから、軽々しくお受けできないと思いました。人形って、ヒトガタだし分身ですから。そうでないと、創作の向上心も湧かないんです。注文受けて制作するようになってきて、ちょっと疲れたかな。なまじっか好きだから、とことん手を抜けないし。
石橋 ところで、新しいものはあまりお好きではないですか。
高橋 すごく好き。いま流行のピッポッパッとかはやらないけど、新しいものを見たいと思ったら、東京まででも行って見てました。三十代後半まで、「あなたが八戸で一番展覧会を見てる」と言われたぐらいに、ほんとによく行きました。絶対行って見たかった。その後は、もういいかな、って。せっかく行っても感じとれなかったり、響かなかったり。年齢とともに変わっていくみたいです。
三浦 何に対しても、とことん取り組まれるんですね。
高橋 わりと。何でもそうですが本物に出会わないと、と思います。いいものは何でも感激して好きになる。この鈴木忠兵衛の鉄瓶にしても、仕事で使っている源光の鋏にしても、いいものはいい。身体にも心にもピッタリくるんです。この家からもパワーをもらっているし。
「いかさま」は困るんです。イカノフは、すてきだけど(笑)。
[8 March 2001]

(ICANOF free press 01に抄録)



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