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【 ICANOF アーカイヴ 】
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世界中の子供達は「カラの皿」を目指して今しも旅の途上にある
( 02年度ICANOF企画展「食間の光景/食間の廃景展」コロック:
03年2月16日/八戸市美術館)

出席/ミロスワフ・バウカ(美術家) パク・ファヨン(美術家)
加須屋明子(国立国際美術館学芸員) 豊島重之(ICANOFキュレーター)
通訳/三浦文恵(ICANOFプロデューサー) 花田喜隆(ICANOFアートディレクター)



(4)今にも子供達は「もう一つのカラの皿」を目指して世界中から旅立つ
豊島  実はあの文章で触れていない、もう一つのお皿があります。それも、やはり空っぽです。ポーランドのどの御家庭でも行われている事ですが、例えば冠婚葬祭とかで家族が全員集まって食事をとる際に、小さいお子さんがもう一つ席を作り、そこに空っぽのお皿が用意される。勿論、一つ余分なお皿です。それは誰のためのお皿か御存知ですか? それは「もう一人の子供」のためのお皿なんです。そのもう一人の子供は今、何処にいるのでしょうか?
 その子供達とは、実は、1940年代に例えばウッジ、ワルシャワよりも少しドイツ寄りのポーランド第2の都市ですが、そのウッジの強制収容所で死んだ子供達です。子供専用の収容所があった街で、14才以下の子供が200万人死んでいる。そしてその3倍もの人々がコンセントレーション・キャンプで死んでいる。所謂ホロコーストです。勿論、子供達も収容所に駆り出されて、自分達の家を造らせられた。その家の中で住む間もなく死んでいった。子供達にとっては自分で自分の墓を掘ったようなものです。
 また、もっと別な子供達もいます。例えばナチスの同化政策によって、20万人とも言われる生まれたての嬰児や幼児がポーランドからドイツに密かに運ばれた。髪はブロンドで瞳はブルー、つまりアーリア人によく似たポーランド人、スラヴ人、ユダヤ人ですね。赤ちゃんで記憶がありませんから、ドイツ人として育てられて、自分のお父さんがナチスの将校であったり、戦後は銀行の頭取であったりと色々でしょうが、未だに素性を知らずに育っているわけです。
 その人達がある日、出自の秘密を知って、ポーランドの空っぽのお皿を目指して旅立つ事にならないとも限らない。その不在の「もう一人の子供」のために、ポーランドの御家庭では空っぽのお皿を余分に用意する。今だとワルシャワは雪がしんしんと降っているでしょう。ワルシャワには、図らずもタデウシュ・カントル(美術家・演劇家)が亡くなった翌日に行った事がありますが、ちょうど着いた日にも雪がしんしんと降っていた。八戸など比べ物にならない程の酷寒でした。
 皆さん、1階のバウカ作品のフロアの入口にテレビモニターがあって、ピンポン球が一瞬にして燃え尽きる映像を御覧になったかと思います。勿論そこには絶滅収容所のイメージも込められている筈ですが、さらに驚いた事に、バウカさんによれば、あれは「ペチカ」でもあると。
 つまり、室内を暖めるべきものが外の入口にあって、中に入ると寒々とした、酷寒とも言うべき光景が拡がっていて、外に戻ると、もう一度ペチカに暖められる。この内と外の反転によって、バウカさんの狙いが過去にも未来にも開かれ、食間というテーマを超えて未知の世界にも開かれているのは明らかです。
 そうした暖かい家の中のなごやかな団欒の傍らには、空っぽの皿が置かれた席がもう一つ用意されていて、そこに座るべき人々が今しも帰途を急いでいる。過去からも未来からも未知の世界からも。この寓話めいたペチカ的なものをバウカさんの1階の作品から喚起させられたわけです。

向かって左から、豊島、三浦、バウカ、加須屋、パクの各氏

(5)過去へと遡るタイムマシーン/雪に覆われた池の「アレゴリー= allegory」
バウカ  とても興味深い御指摘です、私の作品のある側面に対して。自分では考えてもみなかった事です。私の作品にはたいてい幾つもの層があって、どれか一つで十分という事はありません。と言うより、これしかないという説明の仕方がないのです。多くの層があって、例えばあなたが掘ってみた層は興味深いものです。そう言えば面白い事に、作品を作っている間、私は空っぽの皿の事をすっかり忘れていました。
 確かにポーランドでは、クリスマス・イヴに空っぽの皿を用意するという古くからのしきたりがあります。残念ながらクリスマスだけですが。でも、一家の集まりには必ず空っぽの皿と空っぽの椅子があって、予期せぬ客を待っています。ご指摘頂かなかったら、或いはすぐには気付かなかったでしょう。ただ、このプラットフォームは一種のテーブルでもあるのですから、皿があるのは当然だとも言えます。
 肝心なのは、それは私が予期していなかった事態なのですが、このプラットフォームが左に回転し始めたという事です。右にではなく。この事は非常に重要な動きです。時計は全て右回りですから、この回転は時間を遡る事を意味します。1回転毎に、このタイムマシーンは過去へと進むのです。ですから作品の中ではこの動きが重要な役割を果たしています。
 このアイディアが得られたのは、実は偶然でした。この作品の設置をしてくれた友人達=ICANOFスタッフが、プラットフォームを回してみようと、スイッチをオンした時です。まず私は驚いて、というのは右に回るものとばかり思っていたからです。左に回転しているのを見て「いやこっち(右)だ」と思い、その直後に「これでいい」と分かりました。この動きをどう利用し、どう説明するかというアイディアが浮かんだのはそれからです。
 もし私がここに来なかったら、そしてもしプラットフォームが左に回り出さなかったら、或いはこの事にはなかなか気付かなかったかも知れません。ですからとても満足しています。ただ、この事が起こったのは、それが非常に重要な事だからなのです。そして、作品に新たな、非常に重要な意味を与えてくれました。これは、たった一つの予期せぬ些細な出来事が、場合によっては一連の思考をすっかり変えてしまうという実例なのです。
 それから映像にも触れましょう。この映像は、一種の巡礼、ビルケナウ訪問のものです。「冬の旅=ヴィンターライゼ Winterreise」です。雪が風景の一部を覆っているように、皿がテーブルの一部を覆っている。つまり一種の「代理=代表 delegation」でもあるのです。どれだけの皿を置いたらテーブルを覆う事ができるのでしょう。どれだけの雪があったら不幸な過去、不幸な歴史を覆う事ができるのでしょう。
加須屋  御覧になった方はお分かりかと思います。池が雪に覆われて美しい映像なのですが、その下には本当は悲劇が隠されています。それを雪が覆っているんですね。その丸い池の形と、あの回転しているプラットフォームの円形と。その上にどのくらいのお皿を置いたら十分なのかという事と、どのくらいの雪を載せたら過去の悲劇が隠蔽されるのかという事が、バウカさん御自身の中では結び付いていると思います。
(2 out of 3)  >> read more


(図録"ICANOF Media Art Show 2004"より転載)



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