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【 ICANOF アーカイヴ 】
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イナーシア inertia の写真

北島敬三 (KITAJIMA Keizo, photographer)

聞き手 豊島重之(ICANOFキュレーター)

(5)反エモーショナル反ニュートラルな風景写真/「抜け」の写真
豊島 今、北島さんの『ニューヨーク』という写真集を見せて貰ってるんですが、例えば、ロバート・フランクって、お好きですか?
北島 若い頃、『アメリカ人』を最初に見た時、あの情緒がどうしても好きになれなかった。それで、結局深入りできなかったんです。情緒のフランクよりコンセプトのクライン、湿っぽいアジェよりは乾いたエヴァンスっていう感じだったんですね。
豊島 人影のないアジェの写真を、ベンヤミンが犯行現場だと言ったりしましたが?
北島 街角を撮った写真を断片的に見る限りは、そういう感じがするかも知れませんね。アジェの写真集で一番好きなのは、確か横江文憲さんが作った、カタログみたいな安手の本です。アジェが、如何に分類的にパリを撮っていたかがよく判るんです。豪華版は殆ど良くないですね。エヴァンスは、やっぱり、いまだにいいなぁと思います。抜け方が。でも単純ではなくて、レンズのディストーション =distortionを避けるために地平線を真ん中にして撮影して、それでプリントする時は上半分だけ使うというような事をしてるんですね。
豊島 例えば、詩人の稲川方人さんの詩集の扉に「ウォーカー・エヴァンスに捧ぐ」って書いてあって、エヴァンスは詩の中に出てくるわけではないんですが。エヴァンスに対するオマージュから詩集を始めるという、稲川方人だけの、我々には言葉に出来ないような交信があると思うんです。
北島 多分、そうなんでしょうね。
豊島 アジェがエモーショナルだって言うのは、なんか判りますね。
北島 まぁそんなに簡単に、一言で切って捨てられるような人ではないんですけど。
豊島 いや勿論そうなんですが(笑)。
北島 ただ、アジェを好きだって言う心性は嫌だな、俺は(笑)。
豊島 北島さんの風景の写真でも、そういうエモーションであるとか、眼差しとか欲望とか歴史性とかを全部剥ぎ取っていった時に、じゃ、ニュートラルなランドスケープがそこに出来(しゅったい)するのかって言うと、ニュートラルにはなりませんよね。そこは、どうお考えですか?
 つまり消去法で、いくら剥ぎ取ってもゼロにはならない。ゼロはゼロとしてのエモーションがある筈ですが。勿論マイナスにもならない。写真というのは、いくら引いてもゼロにもマイナスにもならないとしたら、どういう風景が出てくるのか。そこが今度の「風景にメス」展の核心の部分なんですよ。
 北島さんは風景をいまだに、『PLACES』のシリーズを続けていらっしゃる。しかも、その風景に最近ますます、のめり込んでいるんだと仰っていましたけれども、何なんでしょうね?

(6)横ざまのファインダー/複数性のポートレイト
北島 勿論、ニュートラルな風景なんて無いし、ゼロを求めているわけでも無いです。そうではなくて、そこで「残ってしまうもの」とか、逆に「余りみたいなもの」に魅かれるんですね。
 ポートレイトは8×10、風景は4×5を使うんですけれども、大型カメラって結構面白いんですよ。カメラを覗くとピントグラスに逆さに写ってる。逆さに写ってるから、こうやったりして、何となく纏めていくんですよ。その時に面白い感覚があって、その場面を自分が横から見てるんです。ちょうどスライド上映している時に、プロジェクターの脇に立って操作している感じと似てるんです。ていうか、実は同じなんですね、撮影も。カメラのピントグラスにプロジェクションしてるわけだから。35mmのファインダーだと、それが判らない。
豊島 これ、例の白Yシャツですよね。じゃあ、ここに来て貰って撮る事もある?
北島 いえ、ここで撮るんです、全部。このストロボ焚いて。プリントもここで。
豊島 やっぱり定点観測みたいに、定期的に半年後にもう一回、同じ人を撮るとかですか?
北島 そうですね。最初に、一人一年に一枚ずつ撮影していく、毎回できるだけ同じように撮る、という事を決めました。変化を狙っているのではないので、全部が同じように見えてもいいわけです。あとは、実際やってみながら、横位置画面、顔は正面でバストショット、バックは白くて広め、目線はレンズをはずす、その人の持っている白いシャツを着て貰う、などという風に少しずつ決めていきました。そして、撮った写真は全部イキという事にしました。
 選ぶという事が無い状態ですね。というか、結果としてそうならなければダメだと思いました。つまり、選ぶという事は、どうあれ、ある写真に固有性を与えてしまうという結果になるわけです。固有性という事は、交換できるという事でもあります。例えば、商品として流通しやすいわけですね。しかし、そうではなくて、あらゆる写真が予め「交換不可能な単独性」を持っていて、それを抽出できないと失敗だと思ったわけです。
 でも、始めてみると、人によって全然変わらない人もいるし、同一人物とは思えないくらい変化する人もいたりして、全く予測できないんです。それから、2枚並べた時と、10枚並べた時と、バラバラにしてみた時と、見えてくるものが違うんですね。とにかく、複数で見ないと判らないので、ある程度見極めがつくまでかなり時間がかかってしまいました。

(7)「答えとしての写真」という問い/「横から染みた3cm」が織り成す写真三昧
豊島 北島さんの発想には、所謂、数論とか集合論とかに近い処があると思うんですが?
北島 スナップをやめてから、自分の写真をずーっと見てたんですよ。過去の自分のコンタクトの中に自分のやるべき事のヒントがある筈だと思って。そしたら、顔と風景が分離してきたんですよね。それならポートレイトを撮ってみようかなぁって、そこに行き着いた。それで考えたのは、ポートレイトを撮ろうとか、風景を撮ろうって発想しても絶対ダメだから、むしろ、ポートレイトを撮りなさいと言われたらどうするか、風景を撮りなさいと言われたらどうするかっていう形で発想しようと思った。
 ポートレイトを撮れって言われたら、俺なら、どういう形で提出するか。それはもう結局、入門書とか教科書的になってくるわけです。ポートレイトってジャンルがあるから、それに対してどういう答えを出すか。風景写真っていうジャンルからどういう答えを出すか。そういう形で発想しないと。
豊島 御存知だと思うんですが、写真家でもあったスタニスワフ・イグナツィ・ヴィトキェーヴィチが肖像画商会をやるんですよ。彼が提唱していた「純粋形式=チスタフォルマ」に基づく絵画とか演劇とか色んな活動をやって、ある日、それを全てやめると言う時に、肖像画家になる事によって、やめるんです。そこがポイントなんです。その時に、Aタイプの肖像画だと幾らで、こうやって描く、Bタイプだと、背景も加えて幾らですと。そういうAタイプBタイプCタイプっていう肖像画商会の規約も作るんです。当社はヴィトカッツィ肖像画商会と称する、っていうのから始まって、顧客に対する要望事項とか禁止事項まで列挙していく。
 彼がなぜ芸術をやめて、純粋形式・純粋絵画・純粋演劇からスパッと抜け出て肖像画に行ったかっていう処なんですが、いわば、「呼び掛けられる形」です。実際には、肖像画商会を開いたので肖像画どうですか、と呼び掛けるわけですけれども、頼まれて描くっていうスタイルを作る。それで大量の肖像画を描いた。北島さんが仰ったのと非常によく似てるので驚いて(笑)。
北島 なかなか、面白い話ですね。
豊島 幾つか色んな写真論とか読んだりするけど、北島さんが仰ってるような事はどこにもありませんね。photographers' galleryの本を読めば載ってるんですかね?
北島 いや、出てないですよ(笑)。
豊島 じゃ、このインタヴュウは貴重ですね(笑)。NYの写真はもう、世には出さないんですか?
北島 いま印画紙の生産が減ってるんですよ。僕ね、プリントを1枚も持ってなかった、全部捨てちゃって。それで、35mm、自分の撮ったこれも含めて、全部焼き直してるんですよ。多分あと2年はかかると思います。
豊島 やっぱり印画紙も使い分けるんですか。ポートレイトと風景とか?
北島 結局、使い分けてますね。調子調べて、色々テストして、これだっていう風に決めるから。プリントのサイズも違いますしね。
 スナップの方なんですが、今、焼いとかないともう無くなっちゃう、と人からも言われて焼き始めたら、これが大変で。要するに「ゼラチンシルバープリント=gelatin silver print」で、きちんとした処理をするんで、手間がもの凄くかかるんですよ。ここにあるのは第一段階で焼き上がった処です、これから「フラットニング=flattening」したり修正入れたりとか。
 最終的には、紙だから、表面はいいんですけど薬品が横から染みた部分が残るんですよ。その部分3cmくらいをカットして、仕上げるっていう形に持ってくから時間かかるんです。
 結構、写真三昧ですね(笑)。

(03年3月 新宿/photographers’gallery にて収録)
(3 out of 3)


(図録 "ICANOF Media Art Show 2004" より転載)



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